緊張して呼吸が浅くなって頭が真っ白になったり、重心が浮ついて吹きすぎの酸欠、過呼吸や猛スピードの暴走演奏で崩壊したことがあります。逆に注意散漫の気の抜けた練習にただ時間だけを浪費してしまうこともあります。
人が緊張する原因は、防衛本能にあるようです。心臓の鼓動を速め、全身に巡らす血を増やすことで体がいち早く危機に備えられるようにしているとのことです。しかし、演奏時に緊張に襲われていると、思考のほとんどを支配されてしまいます。そのため、空いている思考の片隅でこれまでの事を処理しようとしますが、追いつかず、いつも通りのパフォーマンスを発揮することが出来ません。気づいた時には無残に吹き散らかした音楽に、後悔を噛み締めながら舞台を後にしています。
大勢の目にさらされる時や、責任重大なソロがある時は、もちろん緊張しますが、パニックになるほどに上がってしまうのは経験上、圧倒的に準備不足があった時です。さらに加えるなら準備不足と散漫な練習しかしていない時です。
緊張はするものです。違いは緊張の中、冷静に立て直せるか否です。そこに少しでも余裕があれば、自分の状況を分析出来るのです。地に足がついていないのに浅い息で吹き飛ばそうとするのは、その演奏から逃げ出したいという逃走本能のようです。
適度な緊張感は必要なものです。弦楽器の弦は張り詰めていないと良い音がしませんからね。
心も同じことです。
フルートは息で音を出しますが、「息」という字は「自」と「心」で出来ています。すべてを体現しているようです。その人のその時が、音に現れてしまうと言うことですから。
私はここにヒントがあると思います。
「自」と「心」を高めることで、緊張と上手く付き合えるのではないかと。