モーツァルトの初期作品集がついに完成
はじめに
長年の構想を温め続け、ついにモーツァルトの初期作品集「Little Wings Of Mozart」を完成させました。この曲集は、モーツァルトが幼少期に作曲した作品を集めたもので、彼の作曲キャリアの第一歩を含む貴重な作品群を収録しています。モーツァルトが30年にわたり膨大な量の作曲を行い、その集大成であるK.626レクイエムに至るまでの軌跡を辿ることができるこの曲集は、彼の最初期の創作活動に焦点を当てています。
モーツァルトの幼少期の作品
この曲集に収録されている作品は、正式に出版されたものではなく、スケッチとして残されているため、モーツァルト自身の指示がほとんどありません。そのため、解釈の余地が多くあり、過去に出版されたピアノ譜や直筆譜、数少ない録音を頼りに編曲と実演を繰り返しました。その結果、49曲を2重奏で演奏可能な形に仕上げることができました。
ロンドン・スケッチについて
本書のまえがきでも触れていますが、ロンドン・スケッチと呼ばれる曲集は、モーツァルト一家がロンドン旅行中に父レオポルトが病にかかり、足止めを余儀なくされた期間に書かれたものです。ピアノを弾くことを禁じられていたモーツァルトは、日々溢れるアイディアを書き留めていたと言われています。この期間には6曲のソナタを発表しており、数ヶ月前には交響曲も書き上げています。
スケッチブックの意義
一般的にピアノの曲集として取り上げられるロンドン・スケッチですが、発表を前提とした作品ではなく、アイディアを書き留めたノートと捉えるのが適切です。このスケッチブックを音楽全体への旋律として捉えれば、解釈の範囲は格段に広がります。モーツァルトがこれらのスケッチを書いた時、彼の頭の中でどんな壮大な音楽が奏でられていたのかを想像しながら演奏することで、より一層彼の音楽を身近に感じることができるでしょう。
フルート演奏と編曲の工夫
本書によるフルート演奏の参考資料も作成していますが、すべての楽器で演奏可能なように編曲を進めました。この曲集はモーツァルトが5歳の時初めて作曲したK.1から、父レオポルトによる幼児教育期が終わる8歳頃に作曲されたK.5まで、そして同時期にロンドンを旅行中にスケッチされたK.15a – K.15qqのいずれもピアノ(クラヴィコード)のための曲集、合計49曲を2重奏のために編曲しています。