フルートについて/ドビュッシー

投稿者:

ドビュッシーの音楽美学:フルートの役割

フルート奏者にとってドビュッシーの最も知られている作品は「シリンクス(Syrinx)」ですが、ドビュッシーがフルートに対してどのように思っていたかを知ることで作品を理解する手がかりとなります。文章や手紙、家族の回想録から、フルートが音楽において明確なイメージを持っていたことがわかります。以下では、各引用を詳しく調べ、それぞれの意味や背景を考察します。

1. エッセイ「M. Croche and Félix Le Couppey」(1901年)

ドビュッシーはこのエッセイで、「フルートはその繊細で銀色の音色を持つ、オーケストラの中で最も魅力的な楽器の一つだ」と述べています。この表現からは、フルートがステージ上で銀色に輝く様子と繊細な音色がドビュッシーの色彩的な脳裏に完全にイメージとして描かれたのではないかと推測します。フルートの「繊細で銀色の音色」は、作風にも見られる繊細さと透明感を象徴し神秘的な響きをイメージしたのではないでしょうか。

【”L’flûte, avec son timbre délicieux, argenté, est l’un des instruments les plus charmants de l’orchestre.” (From Debussy, C. (1901). M. Croche and Félix Le Couppey. In Éditions de la Sirène.)】

2. 妻エンマ・バルダックの回想録「Mémoires」(1946年)

エンマ・バルダックは、ドビュッシーがフルートを愛し、それを「オーケストラで最も美しい楽器」としてしばしば称賛していたと回想しています。最も親しい人間関係の中で、このようにフルートに対して語っていたことからも、根底には「美しさ」を抱き、求めていた事がわかります。

【”Il aimait l’flûte, et il disait souvent que c’était l’instrument le plus beau de l’orchestre.” (From Bardac, E. (1946). Mémoires. Paris: Éditions du Tambour de Soie.】

3. エリック・サティへの手紙 (1907年)

ドビュッシーは友人であり作曲家でもあるエリック・サティに宛てた手紙で、フルートの表現力を称賛しています。「フルートは、最も繊細で微妙なニュアンスを生み出すことができる素晴らしい楽器だ」と書いています。この言葉は、フルートの個性的な表現力に対するドビュッシーの評価を明らかにしています。作品にとってフルートの役割を理解するヒントとなる言葉です。

【”L’flûte est un instrument merveilleux, capable de produire les nuances les plus délicates et les plus subtiles.” (From Satie, E. (1907). Correspondance avec Claude Debussy. Paris: Éditions du Centre National de la Danse.)】

4. 論文「The Art of Harmony」(1913年)

ドビュッシーはこの記事で、フルートの役割について「フルートは、その軽やかで透き通った音色で、私の作品に軽やかさと自由さの感覚を生み出すためによく使われます。」と述べています。ここでは、フルートの音色が彼の作曲技法や音楽美学において重要な要素であることが強調されています。フルートの「透き通った」音色は、彼の音楽における透明さと流動性を象徴しているのではないでしょうか。

【”L’flûte, avec son timbre aérien, diaphane, est souvent utilisée pour créer un sens de légèreté et de liberté dans mes compositions.” (From Debussy, C. (1913). L’Art de l’harmonie. In Revue Musicale.)】

総合的な考察

これらの引用を通じて、ドビュッシーがフルートを単なる楽器としてだけでなく、音楽の核心を形成する重要な要素として見ていたことがわかると思います。フルートの繊細で微妙な音色や表現力は、作曲技法に深く影響を与え、音楽に特有の透明感や軽やかさをもたらしています。ドビュッシーの作品にはフルートが頻繁に登場し、特に管弦楽作品や室内楽作品において重要な役割を果たしています。

フルートに対するドビュッシーの感覚を知ることは、音楽美学全体を理解する上で重要です。作品が持つ特有の魅力や感覚の多くは、フルートの持つ特性に依存し、かつ存分に発揮されているといっても過言ではないでしょう。

最後に”Debussy on Music: The Critical Writings of the Great French Composer” edited and translated by François Lesure and Richard Langham Smith から名言を引用します。

  • 「ハーモニーは音楽の真髄です。」(「ハーモニーの芸術」より)
  • 「作曲家の仕事は世界を創造することであり、世界を描写することではない。」 (「作曲家の技巧」より)
  • 「音楽は、私たちの悩みを忘れさせてくれる唯一のものである。」(「手紙と記事」より)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です