フルート 齋藤 寛 オフィシャルサイト

いくらの楽器を買えば良いのか

楽器店を訪れてディスプレイされているものを見たり、カタログをもらってきて、様々なメーカーのものを見比べて、インターネットで検索をして、口コミやレビューを参考にしても選び出せないのは、同じフルートなのに多様にありすぎるからですね。素材は同じなのにメーカーごとに値段が違っていたり、多彩な言葉で特徴をアピールしてくるのでなおさら迷います。

いったいいくらの楽器を選べば良いのか。

いくらのなら大丈夫なのでしょうか?

先に結論から。

最低限の条件さえ満たしていれば、いくらのものでも予算の範囲で選べばよいと思います。自分の基準で選べるのであれば、そのまま気に入ったものを。何が良いか分からないのであれば以下を参考にしてください。

  1. 頭部管のヘッドと反射板、コルクの調性ができる。
  2. キーが機能している。連動に問題がない。
  3. タンポの調整ができる。押さえた時にちゃんと塞がる。
  4. 各所のネジに緩みがない。
  5. 連結部分にガタがない。

以上です。

現在楽器店で流通しているようなもので、粗悪なものはほとんどありません。メンテナンスの面倒を見てくれるところで購入するのがよいでしょう。

ただし、明らかに安すぎる楽器には注意が必要です。具体的には新品で1万円そこそこで買えてしまうものです。

以前、インターネット通販で外用の楽器として1万円の楽器を買ったことがあります。その楽器は正にフルートの形をしていました。洋銀か真鍮かわかりませんが、はじめの吹奏は問題ありませんでした。しかし、何日かして再び演奏すると、明らかにスカスカしています。タンポが塞がっていないのです。買ったばかりの楽器は状態が安定するまで、幾日か必要としますので、これもそうだと思って、メンテナンスに持ち込みました。通常調整では、タンポの下に薄い紙を敷いて、調整ネジや連動部分にも薄い紙やコルクなどを敷いて微妙な加減でバランスを取っていきます。

この楽器は分解してみると、タンポの裏にはベッタリとボンドがついて剥がすことができず、タンポ自体も厚紙に油紙を巻いただけの粗悪品で、連動部分は明らかにズレており、調整が不可能な楽器でした。職人に吹ける状態にするにはいくらの料金がかかるか相談したところ、5万円は超えるとのことでメンテナンスを断念したのです。しばらくは、インテリアとして飾っていましたが、ホコリにまみれてしまうので現在は丁重に包装されて眠っています。購入金額1万円に修理代5万円を足せば、普通に吹けるものが買えてしまいますからね。

安物買いのなんとやら、安かろう悪かろうを地で行くお買い物でした。

一般的なメーカー品であればこのような事態はありません。

気に入ったものを買うのが良いです。

この後、末永く自分が使うものですからね。

10万円だろうと500万円だろうと、フルートとしてできることは同じです。劇的な差などありません。安いものはすぐダメになって、高いものは長持ちするなどということもありません。頻繁にメンテナンスを必要とするならば、扱い方に問題があるのでしょう。また、高い楽器でもメッキをしていればいずれ剥がれるし、銀は特に錆びてきます。金でさえ連結部分は金属疲労ですり減ります。しかし、致命的なダメージとして起こることは数年のスパンではあり得ません。

どんな楽器でも、それぞれ個性的ないい音を持っています。洋銀だから安っぽい音がして、金だから高級な音がするなどということは一切ありません。これは、それぞれの趣向の委ねられる部分だと思います。

「楽器に育てられる」とは、よく言いますが高い楽器を持っているからうまくなるわけではありません。高い楽器を持っているというが、困難にぶつかった時、自分に言い訳できない心理状態を生み出しているだけです。

楽器は悪くない。誰かのせいにしないのが、良い楽器です。

だから、気に入ったものを買うのが良いのです。

色味や輝きでも、一番吹きやすいものでも、またはその逆でも。有名な人が使っているからとか、店員に進められたから、ではなく自分が気に入ったものと言うのが大切です。そうすることで愛着も湧きます。

別に高い楽器を否定しているわけではないので、勘違いのないようにお願いしますね。要は、自分が納得するなら何でもかまわないと思っているだけです。中古品でもメンテナンスのアテがあるなら当然アリだと思います。ただ、オークションや通販で粗悪品を掴まないよう注意が必要です。

吹けないのであれば、一目惚れでさえも構わないでしょう。

まとめ

・気に入った楽器を購入する

・楽器の機能として満たされたものを選ぶ

・楽器店で一般的に流通しているメーカーのものは心配ない

・楽器は悪くない、うまく吹けないのは未熟な自分のせい


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