フルート 齋藤 寛 オフィシャルサイト

その日の調子

3つ目は、耳の問題です。同じ音でも響くところでは調子よく感じ、響かないところでは調子悪く感じます。響くところでは、気持ちよく吹き「過ぎる」ので、吹き過ぎに気をつけなければなりません。響かないところでも、なんとか鳴らそうと吹き過ぎるので、気をつけなければなりません。いずれにしても「吹き過ぎ」てしまいます。

前日、調子の良かった日の翌日は、大概調子悪く感じます。それは、昨日の調子の良さが耳に残っているからです。そして、吹き過ぎていたからです。興が乗ると攻めた表現をしようとします。よりダイナミックにより繊細に。高潮した精神状態で体もほぐれ、響きに慣れた耳が「良い」と判断していたものだと思います。しかし唇は、過剰に吐き出される息に収縮を繰り返して、疲労が蓄積しているはずです。翌日は同じように演奏しようとしても、鳴っているイメージだけが先行し、強い息を吐き出そうと体は強張り、その息に耐えるように唇は柔軟性を失ってしまいます。

その聞こえてくる音は、昨日との乖離が激しく調子悪いと感じてしまいます。

焦りや苛立ちの精神的な問題でも吹き過ぎてしまいます。怒りのはけ口は、息として攻撃的に吹きつけるでしょう。しかし、逆効果です。余計に鳴らなくなります。それは、負のスパイラルにです。スランプに陥るかもしれません。

過ぎたるは、なんとかです。(過ぎたるは猶及ばざるが如し)

楽器に対しては、息の供給過多、体は息の過剰放出で負担がかかり、良いことがありません。このような時には、落ち着いて唇の力を抜き、ゆったりと自然な息づかいで吹くように心がけると調子が戻ってきます。(音がプルプル震える 参照)

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