フルート 齋藤 寛 オフィシャルサイト

NUVO プラスティックフルート

1.息

楽器の特性上、息を入れると跳ね返されてしまうので、なんとか入る息を探らなければなりません。そもそも金属の楽器とは違うのですから同じに吹いてはいけません。この楽器が応えられる範囲で息を入れる必要があったのです。これは、音圧ではなく倍音や音色で表情をつくる研究に役立つものでした。ポジションやアンブシュアを必要に応じて即座に器用に変化させることは、パワープレイに走りがちな現代フルートでは鍛えづらい領域です。その点、超不器用なこのフルートで音色を研究するのは価値があると感じました。

2.運指

いくつかの運指は、普通のフルートと違うものがありました。3オクターブのファ#は右手薬指でなく中指で、また高音のラは、右手の小指を離す(普通は小指を付けないと音がでません)など。個人的には、いい演奏ができればどんな指使いだろうが、セオリーから外れていようがどうでもいいと思っているのですが、「こうあるべき」の信念を強く持ちすぎて凝り固まった思考で先に進めないのは、やはり障害でしかなく、柔軟に対応するのが良いのに、というときに、フルートだけどフルートじゃない楽器をルールを度返しして上手く吹けるようになる体験は、今後の自由なアプローチにつながるのではと感じました。

3.構造

フルート奏者なのに、メンテナンスは完璧に職人さんにおまかせして、楽器の構造には無頓着な方が多いと思います。もちろん過度な分解や無理やりイジると破損してしまう場合があるので注意が必要ですが、少なくとも、どのキーが塞がったときになんの音が出て、どことどこのキーが連動していて、タンポの減り具合を目視して、キーの開きをチェックして等、精密ドライバー一本でできるチェックなので、これくらいは対応できることが望ましいと思います。このプラスティックフルートが直面するのは、最初にこの問題なので「楽器に責任がない」状態まで自分で仕上げる能力が身につくのではないでしょうか。

以上、初心者にはまったくオススメしませんが、ある程度フルートに慣れた中級者、さらに表現の幅を広げたい上級者には面白い楽器だと思います。

でも、絶対オススメとは言いません。実際何度も嫌になったし、苛ついたり投げ出そうと思いました。かなり根気がいる作業です。

楽器自体は440hlzのようなので、他の楽器とアンサンブルするときには注意が必要です。しかし、生音はおそらく貧弱なので、音量差があるものは難しいと思います。

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