フルート 齋藤 寛 オフィシャルサイト

レパートリー

フルートはレパートリーが乏しいと言われてきました。バロック期と近現代以降を除いてオリジナルのレパートリーがほとんどありません。モーツァルトの協奏曲はありますが、その後ベートーヴェンもシューマンもブラームスもピアノやヴァイオリンの曲は多くあるのにフルートを含むものはオーケストラ曲を除いてはほとんど書かれていません。楽器のなりたちは同じ位なのに解せない気持ちです。

この原因は楽器そのものにあったようです。モーツァルトがフルート嫌いだった話は有名です。ドゥジャンという音楽愛好家の医師の依頼で、協奏曲と四重奏曲を書くことになりましたが、気乗りがしなかったが渋々作曲に取りかかった、と言っています。書く気が失せたのか、K.314はオーボエ協奏曲の編曲して納めることとなりました。そしてフルートの事を「我慢ならない楽器」と表現しています。さらに、シューマンは「1本のフルートより酷いものは、2本のフルートだ」とまで酷評しています。

フルートのレパートリーは、時代の風潮にも翻弄されている思います。ロマン派の内面を重んじる音楽では、フルートがいくら尽力したところで、ヴァイオリンの憂いを帯びたG線の響きには遠く及ばず、からだを震わせるチェロの低音とは比べられなかったことでしょう。この頃の楽器は、トラヴェルソから少し改良を加えた5キーや8キーのものが主流ですが、それでもロマン派特有の熱を表現できるほどの構造ではありませんでした。フルートは鳥にしかなれなかったのです。

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