フルート 齋藤 寛 オフィシャルサイト

楽譜の読み方

バロック音楽の場合、楽譜にはアーティキュレーションと言えるものはほとんど記されていません。当時慣習によって演奏されていたものを、作曲者の意図を汲み演奏しようと尽力しないといけません。またそのように、歴史の底を固めることは、その後の音楽を理解するための基礎になると思います。

ヨアヒム・クヴァンツの著書「フルート奏法」には、音楽に対する心構えや約束事が記されています。楽譜には描かれない当時の”常識”としての演奏解釈が詳しく書かれています。また、この時代様式の楽譜にクヴァンツ自身が書き込んだアーティキュレーションや装飾音、ダイナミックスの指示を見ることができます。その指示の多さに驚くことでしょう。約300年前に書かれた音楽の指南の書です。

また、P.L.グラーフ著の「Interpretation-美しいメロディをつくるための演奏原理-」では、バロックから近代作品までレパートリーを広げて原理原則を説いています。この本の結びには、こうあります。

「感性と理性、頭脳と心、感受性と科学が結合した境地に行き着くにはまず基本となる音楽の文法、音楽の原則に目を向けなければならない」と。

私は、そうして音楽に「魂」が宿るのだと思います。

最近の合成音声の技術は目覚ましい進化をとげています。「Siri」や「Alexa」など、呼びかけにはすぐに応えてくれます。言葉を打ち込めば、読み上げるサイトもあります。意味が伝わる言葉としては機能していると思いますが、やはり不自然に感じてしまいます。言葉をただの「音」としてしか認識出来ないからなのでしょう。その言葉をつなげるだけでは、前後のイントネーションがおかしくなってしまいます。日本語だと特に気になってしまうのは、普段使う言葉なのでその発音やイントネーションに敏感になっているからでしょう。しかし、知らない言語だとあまり気になりません。そもそも知らないからです。

知るほどに楽譜の世界は広く深いものだと感じてしまいます。


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